おふくろの味という言葉があるけど、それっていったい何だ?と娘が生まれてから考える。
これだけ毎日毎日ご飯の支度をしているのに、記憶に残るというのは群を抜いて美味しいのか、お弁当とかで何度も何度も作られたメニューだから記憶に残っているのか。
お母さんが腕によりをかけた得意のメニューか。子どもの好物か。
まさか、おふくろ本人を食べた味ではあるまい。
結局ぼんやりとしたイメージだけで、コレ!というメニューは浮かばない人が多いんじゃないだろうか。
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ハレの日の「とっておき」
もしかしたら、記憶に残りやすいのはハレの日の料理なのかもしれない。
日本にはハレとケという言葉がある。普段の日常をあらわすケに対して、ハレの日はお祭りなどの特別な日。
誕生日とかひな祭りとか、クリスマスとか、特別な日に用意してもらったメニューは記憶に残る気がする。
定番化して同じものを作る確率も高い。
時間がかかったどうか、材料が高かったかどうかということよりも、気持ちで記憶は変わるような。
記憶にあるのは困った味
私の母は栄養には気を使ってくれていたんだろうが、料理はうまくなかった。
記憶にあるのは、どれもおふくろの困った味。
野菜が半分焦げて半分生だったり、切ったものが全部つながってたり、味が薄かったり、肉じゃがと言いながら肉がなかったり(肉がないことを知ったときの落胆たるや)。
あとは生協とかの冷凍のお刺身系はいつも解凍が終わるまで待てず、半分凍ってた。
あれは母が見切り発車で袋から出しちゃってご飯に乗せちゃったらもう、どうしたらいいんだろう。
水をかけたら水っぽくなるし、レンジ加熱したら焼き魚になりそうだし…
結局シャリシャリしながら食べていた。
リンゴのホイル焼き
それでも、今の季節になって「おふくろの味」をひとつ思い出した。
リンゴの芯をくりぬいてそこにバターと砂糖を入れて、アルミホイルで包んでまるごと焼いたもの。
焼けるとき甘くて香ばしいなんともいい香りがして、食べるとアップルパイの中身よりあっさりして汁気たっぷりのリンゴ。
バターが入ってるからトーストに乗せてもいいし、アツアツをバニラアイスに乗せてもいい。
うちは祖母がリンゴ(ふじ)をつくっていた。
長野はリンゴ農家が多いけれど、おばあちゃんのリンゴは世界一だと思っていた。(ちなみに、巨峰も世界一だった。)
世界一のリンゴで作ってるし、フルタイムで働いていた母がおやつを手作りしてくれることが、もう私にとってハレの日だったのかもしれない。
悲しいかな、母本人はこのメニューのこと全く覚えてなかったけど…
私は幼少期にリンゴを食べ過ぎてもういらない。焼いたリンゴも実はそこまで好きじゃない。
夫もリンゴを食べると気持ち悪くなることがあるので、上京してからリンゴは一度も買わなかった。
でも、今年は娘のために作ってあげよう。
そう思うとあの香りがなつかしい。
あーー、、娘におばあちゃんのリンゴ食べさせてあげたかったな。