世界中で人気の、ムーミンとその仲間たち。
2025年にはムーミン生誕80周年を迎えました。
ムーミンの小説は全9冊。
トーベ・ヤンソンは絵本の賞である国際アンデルセン賞を受賞していることもあり、子ども向けのお話かと思っていました。
しかし読んでみると哲学的な名言あり、大人こそ深く考えさせられる場面あり、なによりホンワカした今までのイメージが覆されました。
読む順番、簡単なあらすじやオススメのお話を紹介します!
ムーミンって小説だったんだ
ムーミンに興味を持ったキッカケは、昨年長野美術館で『トーベとムーミン展』を見て、イメージがガラリと変わったことです。
正直それまではムーミンの小説があるとも知らず、雑貨によくプリントされているキャラクターくらいにしか思っていませんでした(失礼)。
私のムーミンのイメージは、真っ白で可愛らしいフォルム、愛らしい表情、パステルな背景。
でも、原画を見るとそれだけではなさそう。
ムーミンが書かれた背景も、ムーミンたちの生活も平和でファンシーではなく、波瀾万丈のようです。
それにしてもヤンソンさん、絵だけではなくお話も書けるなんて天才すぎ。
一度小説が読んでみたくなり、新装版をセット購入しました。
読んでみると、子どもたちはもちろん、大人こそ楽しめる小説でした!
ムーミン小説の順番・簡単なあらすじ
ムーミンの小説は全9冊あります。
それぞれ独立したお話になっていますが、書かれた年代順に読むのがキャラクター間の関係なども分かりやすくておすすめです。
- 小さなトロールと大きな洪水(1945)
- ムーミン谷の彗星(1946)
- たのしいムーミン一家(1948)
- ムーミンパパの思い出(1950)
- ムーミン谷の夏まつり(1954)
- ムーミン谷の冬(1957)
- ムーミン谷の仲間たち(1962)
- ムーミンパパ海へ行く(1965)
- ムーミン谷の十一月(1970)
小さなトロールと大きな洪水は日本では最後に出版されましたが、実は書かれたのは一番最初。
読んでみると、たしかにムーミンたちの見た目もお話の雰囲気も違いました。
第二次世界大戦直後の混乱期に小冊子として出版され、長らく絶版だったそうです。
以下、それぞれのお話の簡単なあらすじです。
小さなトロールと大きな洪水
ムーミントロール・ムーミンママ・スニフが、どこかへ行ってしまったパパを探して世界を旅する短いお話。
ムーミンは、もともとトーベ・ヤンソンがサインの隣に書いていたキャラクター。このお話が書かれたのは第二次世界大戦の混乱期、自らのなぐさめのためもあったそうです。
この巻にしか出てこないキャラクターも多く、暗い雰囲気ですが最後はハッピーエンドです。
ムーミン谷の彗星
じゃこうねずみから「世界が滅びる」と聞いて、そのことで頭がいっぱいになってしまうムーミントロール。両親のすすめで、スニフと遠い天文台へ星を調べに行きます。
途中スナフキンやスノークのお嬢さん(フローレン)が初登場。
彼らと仲良くなる場面はほほえましいですが、世界の異変の元凶である彗星がどんどん近づいてくる様はシリアスです。
たのしいムーミン一家
ムーミントロールたちは山で黒いシルクハットを拾います。帽子に入れた物は次々とおかしな姿に…。
一方、「ルビーの王さま」を探して月まで飛び回っている「飛行おに」。実はシルクハットは飛行おにの魔法の帽子だったのです!
ある日、旅行鞄を提げた不思議なふたり組がムーミン谷にやってきて…?
ムーミンパパの思い出
風邪をひいたムーミンパパは、ママのすすめで若いころの冒険を振り返る「思い出の記」を書き始めます。ムーミンパパが船旅に出る思い出の記と、今お話を聞いているムーミントロールたちの様子を行ったりきたりする物語。
昔も今も、パパの自由っぷりにびっくりです。
スナフキンやスニフのお父さんも登場し、意外な家族関係が明らかに。
ムーミン谷の夏まつり
ムーミン谷の火山が噴火(!)洪水がおしよせてきて、ムーミン一家は流れてきたおかしな家に移り住みます。
その家はなんと劇場でした。
スナフキン、立て札を引き抜きまくるわ24人の子どもたちと暮らすことになるわで大活躍です。
一方、ムーミントロールとスノークのお嬢さんは濡れ衣で逮捕されるなど、わちゃわちゃ明るい展開です。
ムーミン谷の冬
冬眠中、自分だけ目が覚めてしまったムーミントロール。雪をはじめ見たことのないものばかりの中、水あび小屋に住むトゥーティッキやご先祖様、他にもおかしな冬のいきものたちと知り合います。
やがて食べ物がなくなり、ママのジャム倉庫目指して大勢がやってきて…。
家族が目を覚ます春を迎えるまでの物語。
ムーミン谷の仲間たち【短編集】
ムーミン谷のいきものたちがそれぞれ主人公になった、全部で9つのお話が入った短編集。
ムーミン一家は出てこないお話もありますが、それぞれ傑作ぞろい。
私は娘と絵本でも読んだ『目に見えない子』と、スニフの物欲が愛情へ変わるのが分かる『スニフとセドリックのこと』が好きです。
ムーミンパパ海へ行く
平和なムーミン谷に飽きて(?)しまい、移住を決意するパパ。
孤島についたものの、何もかもが上手くいかず空回り。一方、ムーミン谷を愛するママはホームシックに。
私は明るく懐が広いムーミンママが好きだし、自分の家を整えたり料理する楽しさに共感するので、この巻は読んでいて切ないです。
ムーミントロールとモランの交流が印象的でした。
ムーミン谷の十一月
11月、それぞれの思いを胸に、スナフキンはじめ6人がムーミンやしきに集まってきます。でも、ムーミン一家は孤島に行っていて留守。
6人は不本意ながらも共同生活を始め…。
みんな(ミムラ姉さん以外)何かに怯えていたり怒っていたり。当然衝突もします。
その結果変わったり、変わらなかったり。そして1人また1人とムーミン谷を離れていきます。
ムーミン小説は1・2巻はシリアスな雰囲気でしたが、巻を追うごとに明るく朗らかになり、ムーミンたちはふっくらとしたシルエットに。
なのに、まさかの最終巻にムーミン一家が出てこない…。
切なくも、それぞれが一歩を踏み出して終わります。
読んでほしいオススメの巻
全9冊の中で、私が特に好きだった2冊をご紹介します。
たのしいムーミン一家
私がイメージしていたホンワカしたムーミンたちの生活に一番近かった本です。
有名なキャラクターもほぼ(リトルミイ以外)登場しています。
(ちょっとネタバレ)
飛行おにが恐ろしいのかと思いきや、最後の場面でいらだち紛れにヒドイことをしないところが紳士で感動しました。子どもたち向けに書かれたから?
最後まで温かい雰囲気が流れています。
そもそも、他の巻のムーミンは、あんまりムーミン谷にいないのでびっくり。
パパを探したり天文台を目指したり、洪水で流されたり一家で移住したり。
場所はムーミン谷でも、ムーミントロールだけが目覚めて他の家族は眠っていたり、「ムーミン谷の11月」では一家は海に行っていて不在。
あとは回想録と短編集(ムーミンたちが出てこない話も)。
そういう意味でもムーミン谷で過ごしている本作が好きです。
ムーミン谷の冬
冬眠中に自分だけが目覚めてしまい、寂しくなったりイライラしたりのムーミントロール。
でもお話の終わりには彼の自立・成長をひしひしと感じます。
このお話に登場するトゥーティッキは、トーベ・ヤンソンのパートナーがモデルになっていると美術展で見ました。
パートナーは困っていると颯爽と現れ、トラブルを解決してくれる頼れる存在というイメージを持ちました。
トーベ・ヤンソンが好きな人のお話を読んでみたくなりました。
実際のトゥーティッキ、最初はそっけなくて全然優しくなくてびっくり、女性だということに二度びっくり。
実はトーベ・ヤンソンは当時犯罪とまでされていた同性愛を貫いたんだそうです。知らなかった。
なんでもやってくれる、共感して慰めてくれるばかりが優しさではないですね。自立していて、そっけないようで心の拠り所になってくれるタイプの優しさなのかな…?
ムーミンが大人におすすめな理由
私は最近になってムーミンを初めて読みました。
子どものころに出会っていたら、読みやすい文章で、楽しく読んでいただろうと思います。でもサラッと読んでしまってそんなに刺さらなかったかも。
なんでもない場面で、大人こそ良さが分かるというか、染みるお話だと感じました。
哲学的・名言が多い
ムーミンを読んでいると、時折ハッとするような言葉が出てきます。
たくさんありすぎますが、一部をご紹介します。
「(ムーミン谷は)だれでも、すっかり安心していられる谷なんだよ、あそこは。目をさますときはうれしいし、夜寝るのもたのしいのさ。」
ムーミントロール 『ムーミン谷の彗星』p132
「生きるってことは、平和じゃないんですよ」
スナフキン 『たのしいムーミン一家』p119
「有名になるなんて、つまらないことさ。はじめはきっとおもしろいだろう。でも、だんだん慣れっこになって、しまいにはいやになるだけだろうね。メリーゴーラウンドに乗るようなものじゃないか」
ヨクサル 『ムーミンパパの思い出』、p109
「ぼくたちは、ひとつのことばかり考えてしまうんだなあ。きみはなにかになりたがっているし、ぼくはなにかを作りたいし、ぼくの甥は、なにかをほしがっている。それなのにヨクサルは、ただ生きようとしているんだ」
フレドリクソン 『ムーミンパパの思い出』、p135
「昔からのきちんとした悲劇は、出てくるもんが、みんな親類だっちゅうことをわすれずにな」
エンマ 『ムーミン谷の夏祭り』、p162
「どんなことでも、自分で見つけださなきゃいけないものよ。そうして自分ひとりで、それを乗りこえるんだわ」
トゥーティッキ 『ムーミン谷の冬』、p184
「あんまり誰かを崇拝すると、本物の自由はえられないんだぜ。」
スナフキン 『ムーミン谷の仲間たち』p20
みんなおたがいに、人のことは心配しないことにしているのです。こうすれば、だれだって気がとがめないし、ありったけの自由がえられますからね。
『ムーミン谷の仲間たち』、p193
「おい、わたしは怒っているんだぞ」
ちびのミイ 『ムーミンパパ海へいく』、p172
「けっこうだわ。だれかぴったりな、かたき役が見つかったみたいね。それで気が休まるでしょ」
(ミムラに生まれて、ほんとうによかったわ。頭のてっぺんから足の先まで、とてもいい気持ちだもの)
ミムラねえさん 『ムーミン谷の11月』、p86
(親切ではあるけど、ひとのことをほんとうは気にかけていない友だちなんて、ほしくないや。それに、自分がいやな思いをしたくないから親切にするひともいらない。こわがるひともごめんだ。)
ホムサ、『ムーミン谷の11月』、p209
誰にでも、そして読むたびに、ハッとする言葉がありそうです。
いわゆる「かわいい」ではない
小説に登場するムーミンたちの挿絵はもちろんトーベ・ヤンソンが描いていますが、イメージしていた「かわいい」ムーミンとは少し違いました。
丸っこくて笑顔の絵ばかりではなく、悩みが表情に表れていたり、暗い雰囲気の絵も。
登場人物も単純にかわいくはありません。中でもリトルミイのイメージが一番変わりました。
なんたる憎まれ口!そして冒険心と独立心!男前!
今までリトルミイはかわいいキャラクターだと思っていて、気軽にミイが好き♡とか言っちゃってましたが改めます。
スナフキンは規則や束縛が嫌いすぎだし、パパも落ち着いたマイホームに満足できなくなっちゃうし。
とんでもなく悲観的なじゃこうねずみ、自己中心的なヘムレンさん、不安性のフィリフィヨンカ、すべてを凍らせてしまう孤独なモラン…。
ムーミン達は妖精なのかなんなのかよく分からないけれど、嫌になるほど人間的。
かわいいなんてとんでもない!
だからこそ愛されるんだと思います。
そしてムーミン一家は、ちょっと困ったお客さんでも、決して疎外しない。
ムーミン谷にはありのままでいていい。無理に直したり、何かにならなくていい。
だから読んでいて居心地が良いです。
大自然を感じる
スウェーデン語系フィンランド人のトーベ・ヤンソン。夏は誰もいない島にこもって仕事に没頭していたとか。
ムーミンたちもピクニックに行ったり外で寝たり、海に漕ぎ出したりと、小説の中でも雄大な大自然を感じます。
また噴火や洪水など自分たちの力ではどうにもならない天災も、人間には敵わない自然の力を感じます。
自分の悩みが小さく思えるかも?
日常の小さな幸せ
朝のコーヒーやピクニックのパンケーキ、眠る前のキャンディ。ムーミンたちの生活は、身近なところに幸せがあると思い出させてくれます。
読んでいて特に、ムーミンママが素敵でこんな風に過ごしたいと思いました。
ピクニックとお花が好きで、パパやムーミントロールをいつでも受け止める。お客さんを気持ちよく迎え、自分の好きなものを肌身離さず機嫌よく過ごす。
たくさんのお金を使わなくても、気持ち次第で素敵な1日を過ごせると心に留めておきたいです。
おわりに
ムーミン原作小説の順番やあらすじ、オススメの理由などをまとめてきました。
9冊一気にとなるとなかなかのボリュームですが、気になった所から1冊だけでもぜひ読んでみてください!
最後に、美術展で一番心に残った、孤島でホームシックになっていても前向きなママの言葉を載せておきます。
「さあ、明日もまた、長い一日になるでしょうよ。しかも、はじめからおわりまで自分のものよ。とてもすてきなことじゃない!」
ムーミンママ 『ムーミンパパ海へいく』p216


