サボテンも、恋もみんな違う『ボーイミーツガールの極端なもの』

サボテンと恋は、どれも同じものはひとつもない。

さらっと読みやすい短編

山崎ナオコーラさんの本は初めてです。目次を見て、第一話のタイトルが『処女のおばあさん』でおもしろそうと思ったので読んでみました。

書名からイメージされるように全て恋愛小説で、さらっとした語り口で軽く読めました。

この本は9話とエピローグが収録されています。

3話ずつ登場人物が変わりますが(全て語り手は別の人)、読んでいくと他のブロックのお話ともつながりがあります。

主人公はサボテン?

この本の一番の主人公と言えるのは…サボテン

1話に1つずつ写真と解説付きでサボテンが登場し、物語のキーとなっています。

これが、どれも見たことも聞いたこともない変わり種のサボテンばかりです。

長い年月をかけて少しずつ成長するサボテン。

子株を採るために成長点をつぶしたり、突然変異で全く違う形になったりで、唯一無二の形のサボテンができるようです。

私には出てくるサボテンの良さがあまり理解できませんでした。

人間の都合でわざと変異させて、珍しい形を愛でるのがあまり好きではないからです。

ありふれた、真っ直ぐ伸びるサボテンだっていいではないか。

まあ、作者もそれがダメと言っているわけじゃなく、サボテンの多様さを「人生や恋は1つも同じものがない」ということに例えているのだと思います。

物語にサボテンを登場させるのがちょっとこじつけっぽい話もあるように感じましたが…。

(物語の展開も「そりゃないよ!」なところがあるけど、それは自分で「極端なもの」と言っているからよし。)

優しい語り口で、みんな、ありのままでいいよと。

全体的にほっこり

短編の中で私が好きだったのは『山と薔薇の日々』というお話です。

登場する夫婦が付き合うきっかけは登山で、プロポーズのプレゼントはサボテンでした。

夫婦は死後に一緒にサボテンの山を登り、そこで人生を悟ります。

息子たちに対して感じたことと同じだ。他の子に勝つような子だから愛していたわけではない。

お互いが生きているだけで、いや、どちらかが死んだって、愛していける。高め合うためでなく、祈るために関係を築く。

『ボーイミーツガールの極端なもの』、山崎ナオコーラ著、p162

この悟りがやわらかく温かく、1つの愛の形として描かれています。

でも2人が本当に愛し合ったのは死んだ後…。

死んだ後でも、愛し合えてよかったか。

体調悪いとき、気分が落ちているときに元気になれる1冊です。

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