原田ひ香さんの『三人屋』を読みました!
予想を裏切ってほのぼのハートフルではなかったけど、ご飯が美味しそうで、最後はホッとしました。
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商店街にある「三人屋」
舞台はレトロな雰囲気の元喫茶店。町の人は三人屋と呼びますが、三人で一緒にやっているわけではありません。時間によって営業形態が違うのです。
朝は三女の朝日が喫茶店を。
昼は次女のまひるが讃岐うどん店を。
夜は長女の夜月がスナックを。
最近「間借り」のお店も増えてますよね。
三人姉妹の距離は近いようで遠い…。
なぜ三人でやらないかというと、そこには深い訳が。商店街の人々とのエピソードの合間に、少しずつ事情が分かってきます。
出てくるご飯が美味しそう
この本の一番の感想は、とにかく出てくるご飯が美味しそうということ。
朝日のモーニングは自家製パン。切り方やトーストの加減も選べるし、手作り含め選べるジャムはどれも魅力的。
家での食パンの食べ方ってみんなこだわりがあるだろうけど、なかなかお店では指定できないですよね。このモーニングなら理想の形で食べられます。
まひるのうどんはから香川から取り寄せたもの。メニューは かけ と ぶっかけ で、量が選べます。
無愛想なまひるがストイックに作るうどん、コシがありそうです。
夜月のスナックはお通しが大量です。そして、白米は毎日玄米を精米して、土鍋で炊いたもの。
奔放で家出癖のある夜月が、マメに(でもぬか臭くならないよう冷蔵庫で)漬けているぬか漬けも美味しそうです。
こう見ると姉妹3人の性格は作っている料理にも表れているかも。
パン・うどん・ご飯。
高価でも、聞き慣れない外国の料理でもない。この3つにこだわるのはちょっと素敵です。
どれも主食でなくてはならないものだけど、だからこそ家ではできる限り手間をかけずに準備したくなります。
誰かが丁寧にやってくれたら嬉しいだろうな。
今まで原田ひ香さんの作品を読んだことなかったのですが、あまりにもご飯が美味しそうだったので他も読んでみたいと思いました。
ハートフルかと思いきや
この小説は難しく構えずに、サラッと読めます(ほめ言葉として)。
設定から姉妹と周りの人々の心の交流~みたいなハートフルな物語かと思いきや、意外とそうではありません。
なんだか大それたことを夢見て生活していたけど、「ああ、自分こんなもんか」とふと気付く瞬間がそれぞれあって、切ないです。
姉妹の過去にあったこと。商店街の人々の噂。夫婦のすれ違い。
身近だからこそ、衝突してしまうことってあるんですよね。
ご飯やパンなどの主食と同じ。毎日のことだからこそ、ないがしろにしてしまうことも。
ご飯やパンにこだわるように、一番近くにあるものを大切にして生きていこう。というメッセージ…
なのかな??