こんな決まり、誰もボイコットしないの?ー『私たちは25歳で死んでしまう』

「間違っていないのに間違っている。そんなのはおかしい。だけど、最初から自分のいる世界がおかしいなら、仕方のないことなのかもしれない。」

『私たちは25歳で死んでしまう』砂川 雨路著、小学館、p147

寿命が極端に短くなり、結婚と出産が半強制の社会…。

あなたなら何を思いますか?

500年後の世界…?

舞台は、隕石から発生した毒素のせいで平均寿命が25歳の世界

人口減少を食い止めるため、統一政府が15歳になった国民の就労先の決定結婚相手のマッチングをします。

出産が奨励され、子どもの人数で年金額まで変わってきます。

政府が就労や結婚を管理するのは、職や結婚相手選びで妊娠可能期間が損なわれるのを防ぐため。

生後半年で子どもが施設に引き取られるのは、次の妊娠の妨げにならないため……。

「異常が日常となった世界」で生きる女性たちの短編集。

あんまり現実味がない

この本は設定がファンタジーですが、そこで生きる人の感覚もいまいちボンヤリとして共感し損ねました。(最終話の「カナンの初恋」は面白かったです。)

現実にはない設定だからこそ、描写や登場人物の考えはリアルでないと、と思うんです。

最初に違和感を感じたのは第1話で生まれたばかりの赤ちゃんが自分の指を吸い始めたところ。

赤ちゃんは、生まれたその日に指は吸いません

自分の手のことをまだ発見していません。

子どもが半年で施設に引き取られ家族がバラバラになることに違和感切なさを感じる登場人物はいるものの、

「こういうものだ」とすぐ引き下がってしまいます。

「女性は妊娠~出産で仕事のキャリアが形成しにくい」と書かれている部分もあります。

それは私たちの世界もそうかもしれません。

「子どもと一緒に暮らす」「成長を側で見守る」など良い面もあって、自分で選択した上での出産なら分かります。

それを「義務だから」「普通にならなければ」と、デモとか起こさずに皆が従うものか?

自分の後、世界が何世代続くかなんてぶっちゃけ関係ないのに…。

この仕組みから逃れるには、失踪して別のコミュニティを探すしかありません。

それは、安定した職や市民権、家も何もかも失うことでもあります。

そんな社会でも、登場人物たちは感情表現があまり激しくないので歯がゆくなります。

私は「カナンの初恋」という話が好きでした。

自分はもう25年以上生きてるけど、まだ未来があると希望を持ったり学び続けられることの幸せを想いました。

そして、夫婦どちらかが先に亡くなってしまうことの悲しさ。

遺される方も、遺す方も…。

これは、身にせまりました。

疑わなくなるかもしれない

逆に、生まれた時から「こういうものだ」と教えられたら信じ込んでしまうのかもしれないと思いました。

親の顔も知らず、写真でしか見たことのない相手と結婚し、即座に出産が奨励されることが「当たり前」。

きっと隕石墜落前の書籍とかネットの情報も政府によって制限されているのでしょう。

私たちも何か大変なことが起こっていても、それが当たり前と思えば意外と気付かない、疑わないのかもしれません。

そう思って読むとけっこう怖い小説。

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