どんだけ人出てくるんだー恩田陸「ドミノ」の読書感想

今日ご紹介する「ドミノ」は画期的な構成で映画を見たような読後感のある小説です。
年末年始に少しまとまった時間が取れるという方や、帰省の新幹線で何か読みたいという方にもおすすめの一冊です!

※結末には触れないようにしていますが若干のネタバレを含みますのでお気をつけください。

あらすじ


登場人物が多いお話の場合、最初のページに人物紹介が載っている場合がありますよね。

この「ドミノ」の場合、本を開いた途端なんと27人と一匹の登場人物が!!しかもそれぞれのキャラを象徴するような一言が入っていて、本を読んだ後に見返すと納得がいきます。逆に言うと、最初に見たときは何のことかよく分かりません。

「ドミノ」ではそれぞれの登場人物のお話が数ページずつ切り替わっていきます。それぞれのお話は最初全く関係が無いように見えます。

が、読み進めていくと全ては同日に起こっていることだと分かり、結末に向けて27人と一匹が複雑に絡み合い東京駅に集結していきます…!

読んでみての感想

登場人物魅力的すぎない?!


私はこんなにずらずらと登場人物が並ぶ小説を初めて見ました。

いや、例えば「ワンピース」のように主人公が旅をしてその行き先でそれぞれ人に出会うとか、登場人物がたくさん出てくる小説やマンガは多いですよね。

ただ、この小説の登場人物は全員主役級。というか、この人が主役!というのがなくて全てのお話が平等に進んでいくんです。

登場人物は一人一人本当に生き生きとしています。これだけいると似たような性格の人や似たようなお話が出てきそうなものなんですが、それぞれのやっていることは個性的すぎて全くかぶらないんです。

例えばこんな人たちがいます。

一億円の保険契約が営業強化月最終日の締め切りに間に合うかどうかの瀬戸際で契約書を運ぶ部長にトラブルが!
契約はどうなるかと騒然とし、策を練る同僚たち。その一方、お菓子を買いに出て、ドミノにおいて重要な役割をする女性職員。

いとこに協力させて彼女に別れを切り出そうとする青年と、自分を裏切りそうな彼に復讐を決意する彼女。

落選続きのオーディションを受ける前に、ライバルの母親に下剤を盛られてしまう子役の女の子…。

他にも「よく、こんなシチュエーション思いついたなあ」という状況と人物達がどんどん出てきます。だから登場人物が多くても「あれ?この人誰だっけ?」と最初の紹介ページに戻りたくなることはあまりありませんでした。

これは恩田陸さんの描き分けの技術ですね。脱帽です。

恩田陸さんの場面を想像させる力がスゴい!

私は恩田陸さんの小説に「書き出しが鮮烈」というイメージがあります。

例えば私が小説を書くとしたら、きっと今はどんな状況なのか、この登場人物はどんな人なのか、説明のような文章が多くなってしまいます。

恩田陸さんは違います。まるでこれまでずっと続いていたお話のクライマックス直前から読み始めたかのようなテンポ感で始まります。説明臭くないのに、イメージが一気に浮かぶのです。

これはもう読んでみていただかないと伝わらないかと思います。

「ドミノ」はいわば数ページごとに物語が新しく始まっているようなもの。ごちゃごちゃ説明が長くならずにこれだけリズム良く読めて、すぐその登場人物の世界に引き込まれていけるのは恩田陸さんならではじゃないでしょうか。

どのお話も「この先どうなるの?!」と知りたくてたまらなったところですぐに違う人のお話になり、そこでも「この先どうなるの?!」という気持ちになります。

ただ、さすがに物語が進むと登場人物同士の関わりが複雑になります。これはどちらかというと私の記憶力の問題ですが、途中からこんがらがってきました。
また、キーになってくるのが登場人物の持ち物の紙袋なんです。2/3ほど読み進めたところで「あれ?今誰が何持ってるんだっけ?」と分からなくなり、結局人物と何を持っていたか簡単にメモしながら読みました。

もしかしたら私に起こる出来事も…

ドキドキハラハラしながら読み進め、読み終わるとスッキリ爽快でした!そして、もしかしたら日々私に起こっている出来事もドミノの1ピースなのかもしれない…と壮大な気持ちになりました。

友達の友達の友達…と辿っていくと7人で世界中の人に行き着けると聞いたことがあります。

私のやっている小さな行動も、意外と天の上から俯瞰で見たら他の人の生活と接していることがあるのかもしれません。主人公達だって他の登場人物のことは知らなかったし、まさかこんな展開になるとは思わなかったはず!

と、関東から地方に引っ越したためにあんなにたくさんの人が一緒にいることは無いどころか、昼間でもすれ違う人が誰もいない細い道を歩きながら考えました。

次は上海だ!!!

19年ぶりにドミノの第二弾が出ました!次の舞台はなんと上海!

第一作のドミノの主人公のその後が見えたり、第一作でもいい味を出していた動物が増えて大活躍していたり、スケールが壮大になって面白いです。

第一作の「ドミノ」二作目の「ドミノin上海」ともにおすすめです!是非読んでみてくださいね!

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