恋愛小説とは知らずに読み始めました。恋愛小説ではありましたが、同時に芸術的・哲学的な小説でした。
『マチネの終わりに』簡単なあらすじ
人気ギタリストの蒔野聡史と国際ジャーナリストの小峰洋子。38歳と40歳という年齢で出会った2人は初めて会ったときから惹かれあいます。
でもこのとき、洋子にはフィアンセがいる。
コンサートのある蒔野とパリ在住でイラクを取材をする洋子は、なかなか会えません。
直接会ったのはたった3回。
それでもスカイプで話したり、会えない時間が愛深めたりして、心を通わせていきます。
ただ、ある1つの小さな出来事をきっかけに徹底的にすれ違ってしまい…
2人の関係はどうなるのか、最後まで目が離せません。
ちなみに…マチネとは、フランス語で午前中のこと。コンサートやミュージカルなどで昼間の公演のことを指します。
哲学的な雰囲気が好き
この本は恋愛小説ですが、他にもいろいろなテーマが含まれています。
アーティストのスランプ、天才と凡人お互いの苦労、イラク問題やPTSD、複雑な親子関係、40代以降をどう生きていくか。
「孤独とは」「幸福とは」「運命とは」…
私は本筋である恋愛については途中イライラしてしまったのですが、こうした考察や描写の雰囲気はとても好きでした。
(哲学的な内容や、固めの文章が苦手という方もいるかもしれませんが…)
特に記憶に残ったのはこちら。
人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?
『マチネの終わりに』平野 啓一郎著、 文藝春秋、p29
「他人と過去は変えられない」という言葉があるように、過去は不変というイメージがありました。
でもたしかに、起こったことには本来良いも悪いも意味なんかない。
それを意味づけているのは私たちです。
振り返る心境が変われば過去の意味も変わります。
この言葉を覚えていたら、過去や今現在体験していることの見方が変わりそうです。
蒔野と洋子が出会ったことは、2人にとってどんな「過去」になるのでしょうか。
人の恋路をジャマするやつは
イライラしてしまったと書きましたが…
作中、ある人の行動で2人の運命が大きく変わってしまいます。
その前後も「そんないろんなことタイミング良く起きないよ、小説でそれ言ったらオシマイだけどさ…」と若干白けていたのですが、その場面で1回読むのやめようかと思いました。
「なんてことすんだ!!」
洋子は大人すぎるほど大人だったなー。私だったら怒ったり騒いだりしそうだなー。
そんな人を蒔野さんは好きにならないだろうから、そもそもこの仮定は成り立たないけれど。
2人を客観的に見るとそう感じるだけで、現実では意外とすれ違いは起こっているのかもしれません。
あのときもう一言添えていたら。
あの出来事さえなかったら。
後悔するのも、過去の意味を変えているということなのかな。
私のお気に入りの場面
私は、2人がイラクの友人のために映画のラストを再現する場面が好きです。
洋子が詩、蒔野がギター。
言葉、音楽、映画。芸術の力を存分に感じる小説でした。
子どもが大きくなったらまたコンサートとか行きたいなあ。
…何年後かなあ。
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