最近雨続き。
家にいる時間にオシャレなオムニバス形式の映画を観た気分になる小説を読みました。
『ハニーズと八つの秘めごと』
著者:井上荒野、出版社:小学館、2011年3月2日
恋愛小説なのにクール
この短編集には9つのお話が入っていて、それぞれ男女(その他)の恋愛がテーマです。
でも、読んだ感じがすごくクール。淡々とした印象です。
最後のお話「ハニーズ」を読み終わってから、その前までの8つのお話が「八つの秘めごと」なのか!!と気付きました。
内緒の恋愛だったり、片思いだったり、、秘めごとならではの描き方がされています。
恋愛に関する感情表現が出てこない
この短編集は恋愛小説なんですが、主人公の「好き」とか「嫌い」とか「浮気されて悲しい」とか「ふざけんな」といった直接的な感情がほとんど出てきません。
秘めている思いだし、ストレートに言わないのが大人の女なのかも?
それにしても、主人公の独白でも出てきません。
小説としてはあんまり恋愛感情が多いと読んでるほうが胸焼けしてくるので、この本はサラッと読めます。
でも、読み終わった後に「あぁ…好きだったんだな…」とじんわりきます。
最初は誰が意中の人なのかわからない
この短編集は恋愛小説ですが、『八つの秘めごと』なので2人が出会ったところから少しずつ仲良くなって…ハッピーエンド!というタイプ(王道?)のラブストーリーは1つもありません。
そもそも、それぞれのお話を読み始めた時には誰と誰が恋愛関係なのかわかりません。(秘めごとですから)
例えば最後の話「ハニーズ」。
ーーこの先少しネタバレです!ーー
主人公と相手は商店街の寄り合いで顔を合わせただけのように書かれています。年齢差もあり、相手には妻もいる。
読み進めていくうちになんとなく2人は不倫関係であることが分かってきて、主人公は不倫相手との子を妊娠もしています。
直接関係性が分かる文章はないのに、表情の描写や名前の呼び方などから少しずつ関係性が分かるというのがクールです。
気持ちはすごい分かる
恋愛についてはっきりとは書かれていないのに、あとからじんわり気持ちが分かってしまうのはなぜなのか考えてみました。
恋愛以外の描写が鮮明
恋愛以外のことについての描写が鮮明です。
例えば最初のお話「ブーツ」。
新しいブーツを履いた主人公が靴ズレをしてしまい、時間の経過とともに赤みから豆になって血がにじむ。
他の指も痛くなるのを覚悟で食い込む網タイツを脱ぎ、裸足でブーツを履く…。
この痛みはすごく分かる。
主人公が裏切られたように感じる気持ちは書いてないけど、痛みと重なって伝わってくるのかもしれません。
食事がよく出てくる
どのお話しも淡々として感じるのに、なぜか親近感を持って読めるんですよね。
その理由のひとつが、9つの短編の中で食事に関することが出てくる話が多いこと。
第5話「犬と椎茸」の、友人が寿司飯に混ぜるため甘辛く煮た椎茸。
第7話「きっとね。」の、主人公が彼に聞いて作る焼きうどん。
第8話「ダッチオーブン」の、夫が焼いてくれた肉とサラダ。
第6話「他人の島」で登場人物達が働いているのは惣菜工場だし、第9話「ハニーズ」の女性たちとつながりのある人はレストラン経営してるし、第2話「泣かなくなった物語」に出てくるラーメン屋さんのチャーシュー麺は印象的。
身近に感じる食べ物が出てくることで、「秘めごと」も自分のすぐ近くで起こっているように感じます。
スポンサーリンク主人公たちはきっと皆オシャレ
秘められた八つのお話をこっそり見る楽しみ。
静かな雨の日の午後に1人で読みたい本です。
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