ひとりだちする娘の後ろには送り出す母がいたー『魔女の宅急便』

最近『魔女の宅急便』を読みました!

前回読んだのは何年も前。大人になって読んでもやっぱりステキなお話でしたが、少し感じ方が変わった気がしました。

魔女の宅急便

著者:角野栄子、出版社:福音館書店、1991年7月10日

少しだけ母目線に

魔女の子は10歳になると魔女を継ぐかどうかを決め、継ぐと決心したら13歳になった満月の日にひとりだちします。

ひとりだちとは、1人でまだ魔女のいない町に行って、自分で生計を立てること

1年は実家に戻れません。連絡手段は手紙のみ。

結構シビアじゃありませんか?!^^;

そもそも10歳で人生を決断するということもわりと厳しいような。

今まではキキの視点だったから何とも思わなかったけど、今回読んだらそんなひとりだちに対するコキリさん(お母さん)の気持ちが少しだけ分かりました。

魔女を継ぐと言ってくれた時の嬉しさ。(絶対好きそうな空を飛ぶことで釣った感は否めない)

13歳までに全ての魔法をしっかり引き継げなかったことに、ヤキモキしたり責任を感じたりする気持ち。

娘の出発前に大慌てで準備をし心配する気持ち。 コキリさんはオキノさん(お父さん)になだめられていたけど、うちだったら絶対夫の方が心配するんだろうな…。

1年後の里帰り。自分が見たことのないものを見たり、自分が知らない人と出会ったりして別人のように成長した娘に再会した時の驚き。

キキが成長していく物語だけど、これは親にとっても自立と成長の物語なんですね。

ジジが可愛い

もうとにかく黒猫のジジが可愛いです。

魔女は生まれた時から母親が探してくれた黒猫と過ごすんだそうです。

ジジは「いい仲間」とか「励ましてくれる存在」というばかりじゃなく、すぐへそを曲げちゃったり、大切なお届け物にじゃれついて ほうきから落としちゃったり困ったことも。

でも憎めません。

私もしゃべる猫ほしいな!!

猫じゃなくても、生まれた時からそばにいて、励まし合える存在っていいですね。

兄弟とも友達ともちょっと違うような。兄弟がそんな存在になる場合もあるのかな?

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周りの人との関わりと心の動きがリアル

改めて読むと、主人公の魔女の子キキがひとりだちして周りの人と関わっていく時の心の動きがとても丁寧に書かれていました。

生まれ育った町の人々が見送りに来てくれたり、里帰りすると声をかけてくれる嬉しさや暖かさ。

ウキウキ期待しながら着いた新しい町で、人々が歓迎してくれなくてしょげかえる気持ち。

仲良くなった男の子とんぼさんに「サバサバしていて女の子って気がしない」と言われ、腑に落ちずイライラモヤモヤする気持ち。(失礼よね!ホメたんだと思うけどね。)

ひとりだちして1年。里帰りは楽しみだったのに、急に自分が上手くできたのか不安になって帰るのをなんとなくためらう気持ち。

魔女のようによく知らないものに対する周りの人々の偏見に傷つく気持ち。

以下は里帰りしてきたキキがコキリさんに話す言葉です。

魔女はね、ほうきにばかり乗って飛んでちゃいけないんじゃないかって思うのよ。(中略)歩くといろんな人といやでも話すことになるじゃない?(中略)

反対にむこうだって、魔女を近くで見れば、鼻がとんがって口がさけてるんじゃないってわかるでしょ。それにお話もできるし、おたがいわかりあえると思うの…

『魔女の宅急便』p252

魔女のようによく知らない存在じゃなくても、例えば国を越えただけで、いやもっと近く隣の人と同士でだって偏見って生まれちゃうことがあるよね。

「分かってもらえないから」と距離を置くんじゃなく、お互い話すことが大事…

これが対象年齢小学校中級以上か!と思うくらい奥が深いと思いました。

やさしいお届け物

『魔女の宅急便』は大人が読んでも面白いし、とても言葉が綺麗でほっこりする物語でした。

ものを届けるということは、そこに送り主の優しい気持ちが込められていることが多いです。

読んでいると優しい気持ちがうつってきます。

少し癒やされたいときに読んでみてほしい本。

ジブリのアニメのイメージがある方は、1巻には映画での全てのエピソードは出てきません。けっこうシリーズ長いんです。

「マチルダはちいさな大天才」を読んでー子どもが育っていく力ー

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