「仕事+食べもの+恋愛小説」というキャッチコピーと題名から、心あたたまる系のお話だと思いました。
イメージと違いました。
心がざわつくのに読むのをやめられない小説です。
2022年芥川賞受賞作品。
『おいしいごはんが食べられますように』簡単なあらすじ
何でもそこそこうまくこなす二谷(男)と、
弱くて可愛くて料理上手な芦川さん(女)と、
頑張り屋で損な役を引き受けがちな押尾(女)。
同じ職場で働く3人。
二谷は芦川さんと付き合ってるかどうか微妙な関係で、押尾は芦川さんが苦手です。
「二谷さん、わたしと一緒に、芦川さんにいじわるしませんか」…
語り手が二谷と押尾で交代しながら、食べものを通して人間関係を描いていきます。
公認の「弱さ」
正しいか正しくないかの勝負に見せかけた、強いか弱いかを比べる戦いだった。当然、弱い方が勝った。
『おいしいごはんが食べられますように』高瀬 隼子、講談社 p138
「頭痛がする」「しんどい」と仕事を休み、残業せずに帰る芦川さん。
そのくせ、「昨日はごめんなさい」と手作りの凝ったお菓子を頻繁に職場に持ってきます。
弱いから、できなくて、やってもらって当たり前という顔をする。
弱い人を怒る方が「ハラスメント」と叩かれる。
やらなかった仕事は他の頑張れる人が負担する。
これって「あの娘はオレがいないとダメだから!おまえは1人で大丈夫だろ!」の理屈とちょっと似てるような…。
理不尽です。
公共の場である職場で、平然と「守るべき人」と差別(区別?)されることがさらに理不尽。
理不尽だけど、誰もが経験したことがあるのではないでしょうか。
食事は大事、がツラいことも
二谷は食べることが面倒。
誰かが作ってくれたら「おいしい」と言わなければならないのも面倒です。
私は食べるのは好きだけど、1人暮らしのころは「全部サプリでよくない?」と思っていた時期がありました。
美味しさに対する金額も、10分で食べ終わってしまうものに対する準備と片付けの時間も、見合わない
というのはすごくよく分かります。
それをクラスで言ったら、教授含めてみんなに「えっ!!」という反応をされてこっちが「えっ!!」となったのを覚えています。
食べることは生きることと直結するから、イヤだと言いづらい雰囲気があるのかもしれません。
食べることは楽しい・おいしい・体に良い・みんなで一緒に、残しちゃダメ。
それが誰かを追い詰めることになるときがある。
誰もが「そういうもの」と思っている、否定しづらい領域に思いっきりNOという小説でした。
二谷さんは疲れすぎなんじゃないかな…
おいしいご飯の前に、よく休んでほしい…。
ジリジリムカムカしてくるのに、描写が上手いからかどんどん先を読んでしまいました。
この題名は、誰の、誰に対する願いなんだろう。
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