『泣いてちゃごはんに遅れるよ』というエッセイを読みました。
この本には、私が出会ったひとや見たものの、さまざまなかけらを集めた。工夫や茶目っ気、はにかみ、やりくり。移り変わりのなかでどうしても見逃したくないと思ったそれらの、小さな景色を書き留めている。
『泣いてちゃごはんに遅れるよ』(寿木 けい、幻冬舎)p15
このエッセイの著者、寿木(すずき)けいさんはグルメ誌の編集者としての経歴があり、レシピ本も出されている方です。文章の中にも台所仕事や料理について、よく出てきます。
読むと、しゃんとして髪を括って、前を向いていこうと思えるエッセイです。
『泣いてちゃごはんに遅れるよ』
著者:寿木 けい、 発行所:幻冬舎、 2021年12月15日
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どんな種類の感情に注目するか
この本は友達がすすめてくれて読みました。その人はこの本を読んで、「子どもを産んだ後も自分の仕事を続けようと決心した」とのことでした。
私は初めこのエッセイを読んだとき、「ざらっとした感情」について書かれていることが多いなと感じました。
終戦の日、カラオケパブで出会った高齢男性グループから大声で非難されたときのこと。
同級生にたまたま再会したとき、自分の立場を得意げに見せびらかしてくるような様子だったこと。
誰かを叱ったり裁いたり、また叱られたり裁かれたりしたときのこと。
自分が子どもだった頃の小さな後悔。
誰にでも似たような感情を持った経験が少なからずあるから、心がざらっとするんだと思います。
自分の感情から少し距離を置く
私は文章を書くときに、あまり人とのイザコザについては書いていません。
というか、書けません。
その出来事が起こったときにリアルタイムで書くと、過度に攻撃的になってしまいそう。でも時間が経っているものは、わざわざ文章にするほど残っていなかったり、もう済んでしまっていたりします。
寿木さんのエッセイには「ざらっとした感情」が出てきますが、読んでいくと最後にはちゃんと解決していきます。
あえてその感情に注目して書いているからこそ、モヤモヤのままにせず、スッキリと解決できるんだと思います。
その感情に注目できるということは、感情にひたりきらず、どこか客観的でいられるからなのかもしれません。
そして、書いていくことで自分が思ってもみなかった結論が出ることもあるんですよね。読んでいくと一緒にスッキリできます。
キリッとした目
私はジブリの映画に出てくるような、「キリッとした目つきの女性」が好きです。
何か成し遂げたいことがあり、誰かと一緒でも、自分1人だったとしても絶対やってやる!という意思にあふれた目。
寿木けいさんのエッセイからはその思いも感じるけど、そこからは一段階、肩の力が抜けている気がします。
がんじがらめに何が何でも!ということはしない。
でも自分の感情には自分で責任を持っている。先に書いたざらっとした感情も、自分で解決する。心がペシャンコになってしまった後も、女友達にすべてをぶちまけるようなことはしない。
ごはんに遅れてでも泣き、落ち込んだ気分に酔ってしまいがちな私から見ると、潔いです。
最後は力強く背中を押してくれ、読み終わるとサッと爽やかな風が吹いた感じになります。
落ち込んでしまった時に読みたい一冊。